これまで、例えば40話目「日々、楽観~未来志向で生きる」の中でもお伝えしたように、未来を見据える目も大事なことでありましょう。
しかし、最近思うことは、過去も財産であるということ。
人は誰しも、過去の思い出の中には、思い起こすことで心に「優しい風が吹く景色」があるもの。
それは言葉では表しづらいところであり、また、言葉ではなく体感で感じ取るものなのでしょう。
悟りの境地を表す禅語に「不立文字(ふりゅうもんじ)」とあり、悟りとは言葉では表しづらいものであり、言葉よりも体得することが肝要と説かれます。
例えば、暑い寒いなどは言葉では表しづらい、というようなことで、頭ではなく体で感じ取ることが大事だということ。坐禅も頭ではなく実際に坐るのが、どういうものかが手っ取り早く分かるものです。
心に優しい風が吹く景色も、感覚で感じ取ってみていただければと思います。
過去とは、例えば、世界の歴史などに見るように、そこから学びや教訓を得ることができ、それもひとつの財産であります。人生についても同様であると言えましょう。
しかし、人の思考とは、放っておくと、幸せなことよりもマイナスなことに偏りやすいものであると思います。
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それは野性の生存本能と言いますか、危険に対して身構えることで自己の安全、生命を保つ反応からくるものなのでしょう。
しかしその殆どのとらわれは、さほどたいしたことのない問題であり、実際、私自身も「他に考えるべきことがあるんじゃないか?」、と自問してハッと我に返ることもあります。
普段からのテーマとしては、「最近、どんな良いことがあったか?」、と自問し、マイナスなことではなく、幸せなことへと視点を向けることが大事なのでしょう。「ありがたや」と感謝の念も持ちつつ。
悩むべき時には大いに悩むことも結構です。その分、人は成長できるのでしょうから。しかし、その殆どは、悩む時間がもったいようなことばかりです。
そして、今までで一番苦しかった出来事と比べ、それに比べれば…と思うことで、その一番苦しかった出来事が活きるとも言えましょう。また、ある研究のデータによれば、一番苦しかった出来事が現在の幸せにつながっている、とも言われます。
そういった点からも、過去も貴重な財産であると言えましょう。
そして、過去を思い出すならば、心に「優しい風が吹く景色」とすることで、それは心と体の健康につながるのでしょうし、人生も幸せで楽しく豊かになってゆくのでしょう。
歌のサライの一節を引用させていただき、今回のお話をしめさせていただきます。
「柔らかな日々の暮らしを
なぞりながら生きる」
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