これまで、時に折に触れお話ししたように、坐禅の要所は調身調息(ちょうしんちょうそく)、つまり姿勢を調(ととの)え、呼吸を調えることにあり、それが調心(ちょうしん)につながる、とされています。
今回は、呼吸に観点をあててお話し致します。
私達は、不安や緊張などのストレスを感じると、自然と呼吸が浅く早くなります。これは、自然の本能の中で、身の危険を感じた時にいわば臨戦体制に入る作用のためと言われています。
ここで面白いのは、その逆の作用も可能である、つまり、意識的に呼吸をコントロールすることで、心もコントロールできる、ということが研究により明らかになってきています。
そして、深くゆっくり呼吸をすることで、心も落ち着いてくる、ということが実証されています。
また、タバコを吸うと落ち着く、と聞きますが、あれもニコチンの作用もあるのでしょうが、ひとつにはその所作の中に呼吸を深くゆっくり行うことが含まれていることも関係している、と私は見ています。
また、重症のうつ病の人に、呼吸法を指導したところ、そのうちの8割の人において、症状が大幅に改善された、とする研究報告もあります。
また、以前にもこの風の人の中でお話ししたように、最新の米軍の必修カリキュラムの中には、呼吸法が組み込まれています。
また、時に強いストレスを感じた時は、「あくび」を自ら意識的に行うこと有用であろう、と私は考えています。
その方法とは、私が長崎の僧堂にいた頃、今は亡き老師様から教わったのですが、顔を少し上へ向けて口を少し開き、息をス~ッといっぱいまで吸って、口をいっぱいに開き、ゆっくりとファ~ッと吐く、というもの。1回であくびが出なければ、2、3回と行うと良いでしょう。
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ただ、もし職場などで行う際は、人目につかないところで行った方が良いでしょう。
尚、この方法は、老師様が仰るには、坐禅の前に行うことで心を落ち着けるため、ということで教わりました。
また、「息」とは、「自ら」の「心」と書きます。呼吸から、心の状態が分かる、ともとれます。
ストレス社会と言われるこの時代、呼吸法も上手く取り入れて柔軟に渡っていくことも、ひとつの歩き方なのでしょう。
実は、私自身も、以前、数ヶ月間、一度もあくびをしていなかった時期がありました。心も疲れていたと思います。今回の話は、その自戒の意味も込めてお伝えしています。
そして、今回の話は、要約すれば、ストレスを感じた時は(できれば、そうでなくとも普段から)、呼吸を深くゆっくり行い、強いストレスを感じた時、もしくは最近あくびしてないな、と気付いたら自らあくびを意識的に行うことで、メンタルのコントロールを図る、ということになります。
尚、調身調息調心という観点から、調身(42話目「良気(りょうき)」の内容)と併せて行っていただければと思います。
この地球の海の寄せては引く様を見るに、地球も呼吸をしているのであると感じますし、それには月も関係しているそうですね。
呼吸ひとつとってみても、人生とは殊に奥が深いものだと感じるとともに、この世の不思議さを思います。
そして、この地球に命が芽生えたことが奇跡、ミラクルなものならば、私達もミラクルな存在なのでしょう。
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